Hyper Carronade

灰色のはい

ヴァロットン展

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ヴァロットン―黒と白|三菱一号館美術館(東京・丸の内) (mimt.jp)

 

月一展覧会計画、早速始動です。

今回はヴァロットン展に行きました。黒と白のハッキリとした版画が主な作品の芸術家。展覧会情報サイトで見て初めて知った人でしたがとても良きでした。わし版画好きやねん。

何気に三菱一号館美術館行ったのも初めてでした。ではいつも通りレポート書きます。

 

黒白ということで自分の漫画作画の参考にならないかなということでこの展覧会を選んだのですが、木版画でたったの2色でも芸術足り得るんだな…と。ひとえに彼の描写力、観察力の高さが故ですね。

やってることがマジでどシンプルだよね。どちらかというと版画は雑誌の挿絵として、食ってく為の手段みたいな部分があって(実際彼はそうして生きてきた)、そこから芸術表現としての価値を生み出したのは本当にすごい。時代も良かったよね、ポスト印象派ジャポニズムの到来。今回の展示からはこの作家の活動に必然性を感じました。そりゃこういう作家も生まれるよねと。

なんといっても色の使い方が巧みだった。というか2色しか無いんだからそうせざるを得ないんだが。画面の中で一番見せたい部分だけ黒なり白なりで抜いたり、画面内の2色の比率や、視線誘導、漫画的な線での動きの表現。版画だから基本作品が小さいんだけど、白黒パッキリしてるのも相まって全体的にものすごく見やすかった。ここは明確に漫画作画にも通ずる部分で是非取り入れたい技術だった。

それから群衆の絵は動きがあって良かった。コミカルでいい。私の一番気に入った絵はこの↓にわか雨に降られた群衆。なんか可愛いさを覚えたのでポストカード買ってしまった。雨に降られた群衆の絵は何枚かあったな。なんかどれも好き。

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この人の書く肖像画を除く人々の絵って見た目も相まってアイコンチックなんですよね。女とかは特にアイコンっぽさを感じた。ヴァロットン最高傑作と謳われる「アンティミテ」の連作を見た時、私はなぜかこの人の作品は好きだがリアルに出会う事があったら近寄りがたいと感じた。最初は男尊女卑の思想あったのかな?と思ったけど、家帰って図録読んでみるとそんな事は一切無かった。単に人間をアイコンとして捉えている、冷めた目線を感じたからかもしれない。

モノクロだからそう感じるのか、彼の作品からは作家自身の温度が低く遠く感じる。画面の作りには追及心を持っているし群衆の観察もよくしているのにフェチズム的なものや自己中心的なものは感じない。ヴァロットンは一貫して傍観者目線の絵を描く。スマートだ。これってやっぱ色でそういうイメージに引っ張られてるのかなあ。曖昧なイメージ持つのは不安だ。彼の心の内は一生分からんが…。

傑作・アンティミテの連作はメリハリの付き方や画面構成が想像の余白をうまく作っていて物語性がある、小説に似ている。というような事を図録で小説家が述べていた。

ごく個人的な好みの話をするとアンティミテより群衆を描いた絵や故郷のスイスの雄大な自然を描いた版画の方が好きだ。この二者にはまだ「作家がいる」気がする。冷静な傍観者としての目線が完成されたという点でもアンティミテは到達点で傑作と呼ばれているのかもしれない。

いやー、結構ボリュームありましたよ。かなり歩いた。

ヴァロットンは木版画だけじゃなく油画も描いていたようだがこの展覧会では展示少なかったですね。まあ展示のコンセプトが黒と白だし、今回は版画にフォーカスしたのでしょうな。欲を言うともっと見て版画作品と比較したかった。

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恒例のお土産よ。

ポストカードが三枚とマグネットと図録と三菱一号館美術館のピンバッジ。

ポストカードは多分活版印刷かなあこれ。かなり凝ってる。やっぱ版画なので映える映える。缶バッジもあったけどそっちはちょっと微妙だった…。一部分だけ切り取って丸型に収めていたのだけど一枚で一個の作品として成り立っているから切り取るとなんか妙になっちゃうね。一枚丸々だと印刷潰れるし、相性悪そう。缶バッジ映えるのは人物画、ロゴ、抽象画(ものによる)くらいかな…。

図録は実は今まで行ってきた展覧会でほとんど買ってないんですよね。理由は他の土産と交通費で金が無いから。でも今回買ってみて、図録必要だな!と思った。作品見直せるのもそうだけど展覧会のキャプション以外の情報も得られる。

キャプション君がある事で作品の理解がしやすくなってるから頼ってるんだけど反面少し疑ってる部分が無きにしも非ずで、それ作った人の主観も入ってね?っていうのがある。ライターの感想がそのまま自分の感想に上塗りされて作品の印象固定してしまう気がして怖い。今回の展覧会も所々怖い部分あった。まるで○○のようだ、作家の○○な心情を表しているように見える、とかね…。ライターは複数いるかもしれないが、図録がある事でキャプション以外の展覧会側の感想が何個か聞ける。ツイッターで感想調べれば良いじゃんと思うかもしれないけどちょっと違くて、公式からお出しされたものっていうのがポイントなのよ。引用文献は多い方が説得力増すだろう?まあただの気持ちの問題です…。

あと図録の装丁が凝ってていいですね~~~同人誌オタク並み感ですが。銀の紙に墨一色刷りのマットPPと銀の箔押しですよ。遊び紙もシックでおしゃれな黒一色のアーガイルチェックの紙。

 

久し振りに東京駅を降りました。あそこは直線的なビルがたくさん建ってて小綺麗すぎますね。地元の繁華街の雑然さに見慣れていると一層綺麗さが目に付く。

行ったのはちょうどお昼時だったから、透明なビルから会社員やOLさんが財布だけ持って出てきて楽しそうに話しながらランチに行こうとしている様子が見られた。少しだけ羨ましかった。私がもっとマトモだったらきっとああやって無敵のようにランチに行けたんだろうな…。"生まれ変わったら何になろうかな、コピーにお茶汲みOLさん"ってね……

 

 

私のランチは普通のかき揚げそば。
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普通で普通に美味しかった。

 

東京駅に自動販売機型の玩具のガチャガチャがあってびっくりした。あれ一台で数種類の商品扱えるしスイカ使えるしで革命的すぎた。私の大好きなつぶらな瞳シリーズのラバマスがあったから回した。
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エビフライチャン

未来のガチャガチャはきっとこの形だけになってしまいそうだな…。そう思うと久し振りにくそ固い丸いガムのガチャガチャやりたくなった。レトロ~

 

高校の美術の先生の20代前半までに色々見なさいという言葉、私はもう後半ですが最近頭に新しい物が入っていかない事でその意味をひしひしと感じます。因みに散々見てきたヴァロットンという名前、覚えられない。

でも後半になったらやらなくていいとは言われてないのでこうして意識して見ていって考えていく。文字にも積極的に残していかないとな…。