Hyper Carronade

灰色のはい

猫とさよなら

実家の猫が死んでしまった。

悲しみたくない。ただ在り方が変わるだけだもん。肉体を脱いで毛玉を脱ぐだけ。形が無くなるだけ。

よく生きた。生きたことを讃え認めるのに悲しい涙ばかりでは華やかでは無い。

あまり亡骸には触らないようにした。触りすぎるとこの肉体だけが猫なのだと勘違いしてしまいそうなる。私は違うと思っている。思いたい。

死ぬって何なんだろうと思う。本当は消失するわけじゃ無くて一種の変化なんじゃ無いかと思う。

でも母と妹は亡骸を撫でながら話し掛けている。やめて欲しい。もうやめてくれ。悲しみたくない。

亡骸を家から運ぶとき、そして箱に入れるときに抱っこした。めちゃくそ重かった。けどぐにゃんぐにゃんして今にも零れ落ちそうだった。鼻から汁が垂れていた。制御のきかなくなった猫の肉体はただ早く焼きたかった。

けれどなんで骨壺に入った姿だけでこんなに悲しいんだろう。生命が止まってから正しい形に移ったのに、良いことなのに、なんて悲しいんだろう。改めて感情は善悪とは違うところにあると思った。

分骨したので手元に少し小さめの骨の集まりがカプセルの中に入ってる。

猫が生きた時間と真っ正面から向き合えるだろうか。

具合が悪いって聞いて、今月は無理そうだから来月実家に帰って顔を見ようと思っていた。普通に会えると思ってたんだけど、生きている内に会えなかった。それがすごく心残りだ。

母が心配だ。色々あったし猫と一緒にいた時間が長いから依存しているって本人も言ってたし、本当に一人になってしまう。

これから見送るという機会が増える。

嫌だな。誰も見送ること無く私が先に死にたいよ。