Hyper Carronade

灰色のはい

老いについて

今日は祖母のお見舞いへ行きました。

お見舞いというか、入院しているわけでは無く家にいるみたいで、従妹と私と妹と4人で普通に食事をして老人ホームにいる祖父と顔を合わせて、少しお店を見た。遊びに来たみたいだ。

でも祖母の病気は結構深刻で、手術が難しいらしい。久し振りに会ったらすごく痩せていた。元々ふくよかな人だったから、支えた腕や肩に骨を感じていよいよ祖母の「じーじより早く逝きたい」というお決まりのジョークが笑えなくなった。祖母は頭はしっかりしてるのに身体がボロボロ、祖父はボケてしまっているけど身体は丈夫。

祖父は多分会ったの2~3年振りくらいかな。驚くほど変わっていた。

老け込んだという印象は無い、寧ろ生まれたばかりの赤ん坊のような無垢な目をしていた。でも背骨は曲がっていたし肉も弛んでいたし、かなりボケてしまったね。無垢なのは記憶が失われているからなのかもしれない。どこまで忘れてしまったのか分からないけど、私たち姉妹を見た時の反応はきょとんという感じで、一応名前教えたらああ、憂か~みたいな感じだった。後から聞いたけど名前とかは覚えているらしいけど誰が誰なのかは分からないらしい。

それから10分くらい滞在したかな。その間ずっと私たちの名前を繰り返しては「なにしにきた?」と2分おきに聞いた。

同じ事を何回も聞いたりするのは私が小学生の時からそうだった。婆どこ行った?だから病院に薬もらいに行ってるんでしょ!ああ始まった、ばーば帰ってくるまでにあと2回は聞くよって。その間隔が短くなったんだな。

私の記憶の中のじーじはもっと背が高くて強気で頑固でビール臭くて優しくて面白くて私をかわいがってくれた。

最後に会ったときはもっと会話できたのに。今はこちらの言葉が通じているのか、声が聞こえているのかさえも不安になるような、目が合わないのね。うさぎみたいな丸い目。

老人ホーム初めて来たんだけど、あそこに入ると「弱い老人」として扱われるからだんだん皆同じ形になっていくんじゃないかな。憐みの目を向けられ、世話される、一人じゃ生きていけない老人にされてしまうのかもしれない。

いや、その仕事をしている人を責めている訳じゃない。実際そういう人たちに助けられているんだ。別に非難している訳じゃない。祖父だってもう83歳だし、入った入らない関係なしにそうなるかもしれない年齢だ。

これも後から聞いた話だけど、祖父に年齢を聞くと七十幾つって、年下の祖母より若い年齢を答えるらしい。新しい事を覚えるのを脳が辞めたのはその時なのかもしれないね。

こうして記憶が保てなくなるのはどういう世界だろう。

私も最近物忘れが増えた。まだ頻度が少ないが、彼はこれがずっと続いている状態なのだろうか。思い出はどうなっているんだろう。思い出すことはあるのかな。全部すり抜けるように埋没してしまったのかな。思い出せない事は存在していないのと一緒だ。今彼は何の上に立っているんだろう。

帰る時、ばいばいって手を振って別れるのが悲しくて涙が少し出た。今住んでいる所と祖父母のいる場所は遠い。そう頻繁にも来れない。

次に会う時、また私は他人に近付くのだろうな。

老いを目の当たりにして気が滅入る空木でした。

今日は祖母に無理させてしまったかな。でも時々私たちは元気ですよって顔を見せないとね。