Hyper Carronade

灰色のはい

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昨日東京都美術館に行って来ました。

藤田嗣治展とおべんとう展の二つに行きました。

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いや~、藤田展すっごい良かったですよ!ちょっと冷房寒かったけど

没後半世紀という事で今までで一番大きな規模の回顧展だそうで、作品の量が圧巻、多くて見応えあった。一人の画家のちょっと大きめな展覧会って影響を受けた画家とか同じ派閥の芸術家の作品も一緒に置いてる事が多いけど、今回の藤田さんの展覧会は藤田オンリー。集めた主催の方もすごいけどこの量を描いた藤田さんももちろんすごい。約60年間の彼の芸術。時系列に歴史を追うように展示されてたので、なんかすごい、絵画の推移だけじゃなくてもう一人の人生を経験したような、充足感。

藤田さんは私が大学の時20世紀美術論という授業で半期かけて学んだ芸術家で、多分私にとって一番よく知っている芸術家なんじゃないかな。彼の作品はどっかの美術館で常設展示だったと思うんですけど『アッツ島玉砕』とか戦争画は見た事あったのですが、有名な乳白色の下地を活かした絵は一枚も見た事無かったので、今日初めて見てやっぱりスライドで見るより実物はずっとなめらかで独特で綺麗だと思いました。見れて良かった。こういうのは次いつになるか分からないもんね。

藤田さんの人生を垣間見たような~と言いましたがキャプションには細かい事は書いていませんでした。多分。

彼がフランスに行ったのは当時の日本美術の技法だけ見様見真似の西洋画に反感を持ったからと授業で習ったような気がするし、もっと生まれた国である日本とうまくいかなかったイメージがあったのですが、今回の展覧会はあくまで彼の関心とそれに伴う技法(主に乳白色の下地)の推移とその当時起こった事を主軸にキャプションは付けられていたみたいです。

…まさか授業が間違っていたとか無いよな?

自分が授業で習った彼の人生よりもこの展覧会から読み取れる彼の人生の方が順風満帆でちょっと戸惑いました。

乳白色の下地の絵肌で裸婦の透き通った肌を表現し、細い黒の線で日本画のように輪郭をとるといったような画風が有名な画家ですが、その前の現在の芸大にいた頃の絵とか、キュビズムとか友人だったモディリアーニに影響されてる絵とか、中南米へ旅をした時の乳白色とは正反対のどぎついべったりとした絵とか、ポスターとか、茶色を基調とした気迫を感じる戦争記録画とか、かなり色んな表現に挑戦した画家さんだったんだなと思いました。更に額縁も手作りしたり、食器とかも作ったり、理想の協会の模型を作ったり…。こんなにアクティブだったとは知らなかった。

裸婦の絵も神秘的で哀愁あって好きですが自画像も好きです。というか外見がキャラクター立ちすぎて好みです。もうおかっぱにちょび髭に丸眼鏡に金のピアスとかね、しかも猫とセットとか、人形愛好家とか、そんなんずるいやんどんだけ属性盛るんだっていう。

そういえば大学の同級生に藤田ってあだ名の、藤田嗣治にぱっと見似ているおかっぱ眼鏡の人がいたな。

自分が完全にセンター分けだからか、おかっぱとか前髪ぱっつん憧れているし好きなんですよね。

乳白色の下地が確立された最初期の絵は画面全体がぼやけて淡めの物が多くて、自分の視力ではギリギリ近くまで近寄らないとよく見えなかったですが、第二次世界大戦より後の作品は線がかっちりとして黒と白のコントラストが強くなって見やすくなったというか、まとまりが出た絵になっていました。ともすると風景画なんかアニメの背景にも見えてくるような気がしてきます。最初期の方が画面に西洋を観察した目とミステリアスさが出ていたけど、晩年のカチっとわかりやすくなった集大成のような絵も好き。選べない。どちらも好きだ。

授業では乳白色の下地を作り上げるのに色々な研究をしていたと習いました。不思議な陶器の表面のような平らで滑らかな絵肌。絵はやっぱり本物を間近で見た方が良いと改めて実感いたしました。

 ふと見てて思ったのが裸婦を描いているけど彼の絵に肉は感じないんですよね。肉の影や骨の浮き出てる影とか丁寧に観察して描いてるけど、人間の女の肉という感じではない。色か線で輪郭を取っているせいかもしれないけど、顔とかも、どちらかというと陶器とか人形っぽい。本当に浮世絵と西洋の油絵との中間のような独特な絵。

絵を全部見終わった後で彼について、すごい愛情深い人だったんじゃないかと感じました。 過ぎ去った過去の物とか失われる手作りのぬくもりとか、そういう物を大事にする人で、ものに対する愛情のこもった眼差しを感じたというか。うまく言えないけど愛を感じたのでした。

キャプションにもあったけど、過去を拾い集める画家さんだったんだなと。フランス滞在から旅を繰り返して元いた日本に戻ってきたらかなりガラッと変わっていて驚いただろうな。しかも戦犯責任問題で色々あったらしいし。そして晩年フランスに戻るとフランスもまた変わっていただろう。藤田さんが高く評価されていた頃とは違って戦争もあったし。

会場もかなり混雑していたのを見ると、彼は愛情深くもあり生前も後世でも愛される人だったのではとなんとなく感じました。 

お土産はフリーペーパーの号外新聞といつものマグネットと藤田と猫アクリルキーホルダー。

草間彌生さんの展覧会でもあったけどこういう似顔絵系というか、展覧会とイラストレーターのコラボ商品はあまり好んで買わないのですが、なんか展覧会を見終わって愛を感じてじんわりしていた自分の心に沁みる絵柄だったのでつい買ってしまいました。

 猫がいつものキジトラっぽい柄じゃないのがちょっと残念ですが、味があってかわいいので作業机に飾ってご神体として私を見守ってもらおうと思います。

ああ、もう一回行きたい展示だな。十月半ばまでだった気がする。余裕があればもう一度行きたいです。

 

次におべんとう展を観ました。

本当はこっちがメインでついでに今藤田さんの展覧会やってるから先にそっち寄ろう程度に思っていたのですが、メインが逆転しました。まあ規模からして当たり前だね…。

まずはお弁当箱の種類から展示が始まったのですが、私の知らない形のお弁当箱がたくさんあって、驚きました。よくあるプラスチック製のお弁当箱か三段弁当くらいしか知らなかったので感動しました。おかずとかお米だけじゃなくて水が入った筒までが一緒くたに持ち運び可能な形になっているやつとか、小さいひし形で五段くらいのお弁当箱とか、でかい持ち運び用のケースに半円型のケースが何個も組み合わさって入っているやつとか。あのでかいのは学校とかで使うのかな。違うけどなんとなく忍たまを思い出した。大勢の食べ盛りな男の子の為の物のように思えた。

あとは他の東洋の国のお弁当箱も展示されていました。他の国の食生活の知識が無いから、いったいこれに何をどういった形で入れるんだ…というような形もあって楽しかった。実際に触れるコーナーもあったので、おままごとみたいに取り出したり片づけたり蓋を開けたりしました。

所々にお弁当に纏わる良い話みたいな展示もありました。お弁当ってあまりマイナスな話を聞きませんよね。いつも温かい話ばかり。大体親が子供に、奥さんが夫に(逆も然り)持たせたり、運動会や花見のような集まりの時に持って行ったり、思いやりで生まれた物だから、マイナスな話と言えば食べ残しを放置し過ぎて酸っぱい匂いがしたくらいしか無いんじゃないかな。

次の展示がお弁当の精に話を聞きながらインスタレーションの中を巡るという体験型の展示。

インスタレーションは5~6個のブースに分かれていてそれぞれにお弁当箱の精の声を受付で渡されるプレイヤーをかざすことで聴けるという物。ブースはそれぞれお弁当箱の精の話のテーマに合わせて装飾されていました。

正直散々藤田さんの展示で歩き回って腰に爆弾を抱えていた身としては一つ一つの精霊の話が長くて疲れてしまいました。すごいアイデアは良いし、子供は喜ぶだろうな(実際子供があちこち走り回っていた)と思うんですけど、もっと椅子用意するか短くするかしてほしかったな。

精霊の話は結構解説風で、お弁当に使われる水はこんなにあるんですよ~とか、稲一本からとれるお米の量は100粒、二口分しか無いんですよ~みたいな感じです。お弁当の抱える問題とかにも言及していましたね。それを解決できるとされる期待の新技術の紹介もあったけど、それが本当にある事なのか精霊ギャグなのかちょっとわかりかねた。お弁当の精という、入り口がわくわくする展示なのに、全部真面目な話でした。もっと精霊ギャグかましてくれても良かったのにな~と思いました。

最後にプレイヤーを返すときに精霊からお礼としてポストカードを頂きました。上の写真にもあります。かわいい。こういう真面目な話を誰かに聞いてほしくて展覧会開いたんだなと思うととてもかわいいですね。紙もマーメイドっぽい紙で良い。

次の展示はお裾分け横丁。お裾分けで出来た横丁とお裾分け受付兼ワークショップ用のスペース、お裾分け用の箱のレンタル。これは鑑賞者も協力して作る型の展示でした。

お裾分け横丁の物の量はすごかったですよ。本当にこれ全部お裾分けなんだなと思うとすごい。

あいにく自分の家にお裾分けできるような物は無いしまたここに来なければならないと考えるとちょっと億劫だなと思いお裾分け横丁の展示を本当の意味で楽しむことはできませんでした。お裾分けに必要な思いやりの気持ちに欠如している。

最後に娘とお父さんが小さい息子にお弁当を作る日記。これは面白かった。娘さんが計画書みたいなものを作ってそれをお父さんがお弁当で再現する、二人三脚のお弁当。

娘さんのインスピレーションがとてもいい。自分が読んだ本やテレビ番組、経験から得たアイデアをもうそのままお弁当に反映させていて子供らしい。でも娘さんのマイブームが地球の起こりについて書かれた本らしいので、肝心のお題が地層とか火山活動とかバオバブの木とか拡大した砂粒とかマニアックで渋い。唐突にピカイアとか出てきたときは思わず笑ってしまった。それは弟さん分からないだろう。

出来上がったお弁当もうまく再現していて素晴らしかった。拡大した砂粒をおにぎりの集まりで表現していたのはすごいうまいと思った。地層シリーズも見た目が綺麗。

 

お弁当には特に思い出が無いんですよね。

幼稚園の時は給食とお弁当が交互に出てたと思うんですけど、給食のカレーが大好きで楽しみだったのでそれしか記憶が残っていないんです。小学校の時は運動会の時に食べる梅干しのおにぎりと、磯部揚げっていうんでしたっけ?細長い唐揚げに海苔巻いてあるやつ。あれが大好きでした。梅干しのおにぎりそういえばめっちゃ好きだった。渋いねえなんて言われたような、そうでもないような。

あとは中学生まで毎年長期休暇の時は従兄弟と祖父母の家に泊まっていたのですが、夏休みの時には昭和記念公園のプールに遊びに行ってました。その時に早朝から祖母と叔母が弁当を作っていたのですが、祖母の作る塩おにぎりが絶妙な塩加減でしかもきれいな三角形で他に具も入っていないのに美味しくて、ばーばの塩おにぎりなんて言って、毎年プール自体よりもそれが楽しみでした。

高校生になると給食が無くなって購買か弁当だったのですが、その頃お小遣いが無くお年玉を崩しながら定期もある程度自分で購入しながら通っていたのでお金が無くてひもじくてちょっとしたジュースすら買えなかったので、購買なんて数回しか使った事なかった。弁当最初の方はまだ拒食症完全に治っていなかったのでサラダだけ作ってたけど朝起きて作るのが面倒くさくて、昼ご飯食べなくなりました。お腹すき過ぎると一周回って空腹を感じなくなるのでなんとか部活終わりまで耐える事は出来てましたね。良い子は真似してはいけません。

廃棄になったコンビニ弁当や廃棄のおにぎりにはお世話になった。大学生の貧乏暮らしで命をこれで繋いでいたので。

あれ?結構お弁当に思い出あるんじゃないか…?お弁当って言うかおにぎりおいしいしか言ってないが。

今でも小腹がすいたらコンビニやスーパーでおにぎり買って食べるし、おにぎりってすごい身近なんだなと再確認しました。

 

展覧会と交通費で財布が空になりました。危うく帰れなくなる所でした。いかんいかん。

そろそろ今のバイト辞めて書籍に近い所で働き始めたいなあ。