Hyper Carronade

灰色のはい

本と映画とアニメを見ました。

本は『営繕かるかや怪異譚』、映画は『ひそひそ星』、アニメは『カウボーイビバップ』です。ビバップは劇場版も観ました。

 

まず『営繕かるかや怪異譚』はその名前の通り怪談の小説でした。

何気に怪談小説は初めて読んだかもしれないです。以前に『一行怪談』は読んだのですがあれはなんというか趣が違う物のような気がして私の中では怪談の分類には入れていないです。

コミティアのスペースにいる際の暇つぶしに読んだのですが、人が周りにたくさんいる状況で読んだにも関わらず結構な怖さを感じました。

オムニバス形式だったのですが、どれも湿り気のある日本らしいホラーというか、水に関する話が多かったです。でも水場にホラーってよく聞くのですがただ形骸的にイコールで結ばれてるものだと思っていたから(私があまりホラー作品に造詣が深くないからかもしれませんが)今回初めて水と怪異が結ばれている作品を見て一層怖くなったというか、なんというか。とりあえず水の描写で恐怖心が掻き立てられました。

印象に残っているのが井戸の話の中で海について尾端が話していたこと。海では色んなことが起こる。人が溺れたり、船が沈んだり。海底には無数の死が沈殿している。

よく考えれば当たり前だしニュースで水難事故の事を聞く機会もある。

目に見えない物が井戸を通ってこちらにやってくることもある。

海は生と死の濃いスープや~と思った。

『ブループラネット』観たから海は生命が生まれる場所というイメージばかりが先行していたけど、そういえば死ぬこともある。というか食物連鎖の嵐だったね。生が生まれるなら死もあるよねそりゃ。ブループラネットの深海の回ではクジラの死体が沈殿して、その死骸にヌタウナギが群がって腐肉を喰らっている場面があった。グロテスクだった。海では誰かの死が誰かの生に繋がるとこの番組では散々やっていた。

話が逸れたけど、水は私たちが生きるのに不可欠で身近で頼りになる存在であると同時に時に私たちの命を奪う物でもあって、人間にとって水は身近でありながら畏怖する特別な存在だ。生きる為の執念と死んだ怨念、そのどっちもが溶け込んでしまうのかも知れない。そして執念や怨念が水の気配を纏って元いた世界に現れてしまうのかも知れない。それが水場に幽霊が出るなんて言い伝えになるのかな。

そしてこの小説の良いなと思う所が、不思議な力で怪異を破ァーーッ!人間界の平和を取り戻した!やったね完!でも無いし、怪異に親しい人間すべてを取り殺されていくパニックホラーでも無い。ただ怪異達のいる世界と人間のいる世界が交わって衝突してしまっていたのを是正し、共存とは違うけどお互いの居るべき位置に戻して、やがて人間はその怪異の事を見ないふりできるようにしている所。

しかも霊能者でもなんでもない大工さんが。本当に除霊みたいなオカルティックな事しないで、埋め立てたりリフォームしたり塀を作るというだけで怪異と人間の接触を避けさせるんです。すごいそれが良かった。

この『営繕かるかや怪異譚』は怪談誌で連載しているらしいので、続編が出たら是非買いたいです。

そういえばこの作者さん『残穢』を書いた方なんですね。私はまだ読んでないんですがめっちゃ怖いと評判の小説らしいです。正直ホラー耐性はそんなに高くないので食指は動かないのですが…機会があれば。

 

次は『ひそひそ星』という映画。

その名前の通りひそひそしていました。モノローグから会話から何まで、潜めた声で喋っていました。30㏈以上の音を出すと人間は死んでしまうから。本当に静かな、物音のしない静かな夜に観たい映画でした。

舞台は人間が絶滅しそうな未来。住むほとんどが人型人工知能ロボットの世界。主人公もアンドロイド。主人公鈴木洋子は宅配の仕事をしていて、レトロフューチャーな見た目の宇宙船に乗って人間が人間に宛てた荷物を星々を経て運ぶ大筋の映画。もうこの時点で好きすぎるんですよね。


映画『ひそひそ星』予告編

 

予告編見たら大体わかるかと思います。私に語れることはあまりありません。

とにかくセリフが好き。ひそひそしてるから美しい詩みたいに聞こえる。

予告編内にあるセリフだと、最初のきかい君のセリフで、鈴木洋子は量産型のアンドロイドなのに、「鈴木洋子ひとつ」って言ってる所とか、「距離と時間に対する憧れは人間の最後のプライドかもしれない」とか。

音と情景がほとんどで、それでも物語が分かる作品すごく憧れるんですよね。台詞で説明し過ぎない。寧ろ足りないくらい無いけど、そこに観る人に解釈の余裕とか秘められた雰囲気の余韻とかを残す。思い返すと結構シンプルな映画だったな。余計な物が無いと思った。そういう作品が私も作りたい。本当に見て良かった映画だ…。

 

最後に『カウボーイビバップ』。実は見た事無かったんですよ。だって宇宙が舞台だって知らなかったものだから。早く言ってよ!もっと早く見たかった!

思ったよりSFだったなあ。なんか路地裏でチンピラが銃バンバンするアニメだと思っていたから、まああながち間違いでは無かったけど船とか星とか出てきて嬉しかった。

すごいシリアスとギャグのジェットコースターで一気に全話通して見てしまった。皮肉たっぷりの台詞もかっこいいね~。フェイかわいい。林原めぐみさんは最高だ。

なんというかああいうビバップの船員たちみたいな関係良いよな。家族未満な所。自由にやって最終的に帰って来る場所。

だからこそスパイクには新しい未来を見て生きてほしかったな…。爺さん婆さんになるまでドンパチしてて欲しかった。でも過去に死んだ男の結末は過去に抱かれて夢から醒めるしかないのかな。フェイは過去に帰る場所が無かったからあそこに未来を見たのに、スパイクは最後まで過去の続きしかしていなかったんだな。

そういえば具体的に過去に何があったのかは詳細には語られませんでしたね。断片的な回想をこちら側で繋げてなんとなく想像するしかなかった。ビシャスが何したのか正直よく分かっていない。とにかく裏切った事しか分からない。私が見逃しただけなのかも知れないけど。ジェットとスパイクの出会いにしてもそうだけど。なんであの二人で賞金稼ぎなんかしようと思ったんだろう。気になる~。

あの後フェイとジェットはどうするんだろうか。ひょっこりスパイク戻ってこないかなと一抹の希望を抱いたけどあの描写だともう無理だろうなあ…。一人の男の物語としてはあそこで終わりなのが一番きれいなのかもしれない。今後を語られることは無いのかも知れない。

漫画版も出ているみたいなので見てみたい。アニメとは違うエピソードがあるみたいだしちょっとレビュー見たら完成度が高いらしいので楽しみ。

しかし、過去、つまり記憶に関する題材って多いよな。過去の清算、決着。失われた物の奪還。人間の成長には不可欠な素材だもんなあ。

私の好きなアニメや映画も記憶がテーマの作品が多い。

アニメの『カイバ』とか『輪るピングドラム』とか『BIG-O』、映画の『MEMENTO』とか好きなんですけどまさにこれらは記憶のお話。

コミティアで出した漫画も宇宙で記憶のお話なのでビバップは観れて良かったというか本当に描く前に観たかった。危うくただの劣化版になるところだった。

 

もっとたくさんインプットしてたくさん感動して経験値を貯めないといけないと思う。

良い作品が作りたいからもっと頑張らなきゃ。

邦画が苦手で全然観れてないので意識して観なきゃな…。邦画、なんというか、主人公が責め立てられるシーンが多いような気がして、共感性羞恥が働いて見てられないんですよね…。自分はどうやら主人公が害されたり恥をかいたり責められるシーンがすんごい苦手らしい。前述の怪談小説でも主人公が腫れ物扱いされるシーンがあって苦痛だった。文字でこうなら映像にされるともっと苦痛だ。戦いでやられる~とかは平気なんだけどね。